石見神楽面は和紙で出来ている!!

石見神楽。

石見に住む方はご存知だろう。

DNAに刻まれていると言われるほど石見の人々に根付く伝統芸能である。

今回はその石見神楽に使用する、お面を取り上げたい。

石見神楽の和紙面は地域の”チカラ”なのだ

そもそも神楽とは、平安中期に成立したとされ、「神座」が語源とされる。

「神座」とは神の宿ることろ、招魂、鎮魂を行う場所を意味し、巫、巫女が人々を穢れを祓うため、神座に神々をおろした際の歌舞が神楽と呼ばれるようになった。

その中でも「石見神楽」とは、神楽の中でも特に島根県西部(石見地方)において伝統芸能として受け継がれている神楽である。

もともとは、収穫期に自然や神への感謝をあらわす神事として神社において夜を徹して奉納されるものであったが、現在では各地の定期上演などで、より人々に親しまれている。

石見神楽は、一般的な神楽のイメージとは一線を画した軽快かつ激しい囃子と舞が特徴で、より演劇性、エンターテインメント性を強めた大衆的な芸能である。

(べき論2話参照)

注目していただきたいのは、石見神楽は一般的な神楽のイメージとは一線を画した軽快かつ激しい囃子と舞が特徴で、より演劇性、エンターテインメント性を強めた大衆的な芸能であるという点である。

つまり、演者は激しく動く必要がある。そのため、面はより軽く、より丈夫で、より通気性の良いものが求められた。

そこでこの地で用いられるようになったのが和紙で作られたお面である。

(お面が先か、石見神楽の激しくなったのが先かは諸説あり)

お面は、一般的には木彫りのものが使用されるが、和紙を使用することで軽量化と通気性の向上を実現したのだ。

加えて、石見地方にはユネスコにも登録されている石州和紙がある。これは楮で作られた強度の高い和紙であり、これを重ねることで充分な強度を確保しているのである。

つまり、石見の伝統的な芸能と工芸品が結びついた石見ならではのお面なのである。

その工程は長く険しい、だからこそ優れたものになる

和紙によるお面づくりは、その工程も独特である。そこには和紙ゆえの手間があるのだ。

まずは原型づくりである。これは石膏による型をつくる作業だ。この石膏の型に粘土を張り付けて粘土型を作成し、乾燥させる。これでようやく粘土型が完成するのである。

粘土型が十分に乾燥すると、面貼りを行う。これは粘土型に柿渋入りの糊で和紙を張っていく作業である。強度を高めるために、和紙は何重にも貼り重ねていく。

和紙を貼り終えると、粘土型を外す。これには漆工芸で用いられる脱活乾漆(だっかつかんしつ)という技法を応用したものが用いられる。これは実際に見て頂いた方が早いだろう。

 

このように、粘土型を砕いて外すのである。粘土型を外すと、目や鼻などの穴開けを行い、下地を塗る。下地は胡粉でムラのないよう何回も塗る。最後に彩色をして完成である。

皆様もお気づきだろう。そう、製作には大変に手間がかかるのだ。例えば大蛇面の製作期間は3か月以上にわたる。

しかし、こうして手間をかけるからこそ、軽くて丈夫な和紙の面が完成するのである。

また、この工程ならではのメリットもあるという。

それは、型が粘土であり、それを砕くため、入り組んだ造形も表現することができ、複雑な形状の面の製作が可能である点だ。

この独特な製法による価値は国内だけでなく、お面がアメリカやブータンなどに献上されるなど、世界でも認められてきているようだ。

 

次回予告と今回のまとめ

さて、ここまで神楽面の製作工程をお伝えしてきたが、我々は実際のお面製作現場を取材することに成功した。

次回の記事では、元の顔に戻るための儀式の準備を行うエビスとコロチの様子とともに、柿田勝郎面工房でのお面製作現場をお伝えする。

 

なお、この記事のまとめとしては、こちらのエビスからの説明がわかりやすいので、参照されたし。