fbpx

日本遺産 石見神楽

日本遺産 石見神楽

石見神楽が日本遺産に登録されました

5月20日、石見神楽が日本遺産に登録されました。

正確には、『神々や鬼たちが躍動する神話の世界~石見地域で伝承される神楽~』が認定されました。

なぜ、『石見神楽』という認定ではなく、『神々や鬼たちが躍動する神話の世界』という認定になったのか、そもそも日本遺産とはどんなものなのか、そして、なぜ石見神楽は日本遺産に登録されたのか、ちょっと見てみましょう。

 

日本遺産とはストーリーである

日本遺産、あまり聞きなじみがない言葉ではないでしょうか。しかし、なんとなく想像はつきますよね。なぜなら世界遺産という言葉は知っているから。たぶん世界遺産の日本版だろうな、という感覚ではないでしょうか。

ところが、日本遺産の趣旨と目的によると、ちょっと違いがあるようです。日本遺産を認定する文化庁によると、平成27年より認定が始まった日本遺産は地域の歴史的魅力や特色を通じて日本の文化や伝統を語るストーリーであるそうです。これにより、当該地域の認知度が高まるとともに、日本遺産を通じた様々な取組を行うことにより、地域住民のアイデンティティの再確認や地域のブランド化などにも貢献し、地方創生に大いに貢献することが期待されています。

世界遺産や文化財指定は、いずれも登録、指定される文化遺産、文化財の価値づけを行い、保護を担保することを目的としたものです。一方で日本遺産は、文化財の価値づけや保全を目的とするのではなく、上述したように、地域の活性化にこの文化遺産を活かすことを目的としているのです。だから、ストーリーとして認定されるんですね。

 

島根にある日本遺産

上述したように、日本遺産は平成27年より認定が開始されました。昨年までに合計で67件が登録され、今年新たに登録された16件と合わせて合計83件の日本遺産があります。

本当は1つずつご紹介したいところですが、83個ご紹介するのは少し厳しいので、島根県の登録されているものをご紹介したいと思います。

島根には合計5件あり、島根県の観光振興課も日本遺産を巡る旅という企画ページを公開していますので、そちらも是非ご覧ください。

では、島根県の5件の日本遺産を見てみましょう。

  1. 津和野今昔 ~百景図を歩く~
    『津和野今昔 ~百景図を歩く~』が平成27年、島根県で始めて日本遺産に認定されたストーリーです。島根県の最西端であり、山口県に隣接する津和野の地には幕末の津和野藩の情景などを100枚に描いた「津和野百景図」があるそうです。この地は森鴎外や西周らに縁ある地であり、「百景図」はその当時のことが記録されています。津和野は町民の不断の努力により、当時の面影を色濃く残しており、「百景図」と合わせて当時の森鴎外や西周が感じた息吹が体験できる城下町です。
  2. 出雲國たたら風土記 ~鉄づくり千年が生んだ物語~
    津和野今昔の翌年、平成28年に認定されたのが、『出雲國たたら風土記 ~鉄づくり千年が生んだ物語~』です。日本古来の鉄づくりである「たたら製鉄」で繁栄した奥出雲では、今もなおたたら製鉄の炎が燃え続けています。約1400年前から存在した「たたら製鉄」、この地では、たたら製鉄の技術だけでなく、たたら製鉄の流通拠点地となり育まれた文化や産業、原料砂鉄の採取跡地を稲田に再生し、燃料の木炭山林を永続的に循環利用するという自然との共生した生活を味わうことが出来ます。
  3. 日が沈む聖地出雲 ~神が創り出した地の夕日を巡る~
    平成29年、有名な出雲大社のある出雲市のストーリーも『日が沈む聖地出雲 ~神が創り出した地の夕日を巡る~』として認定されます。「稲佐の浜」「日御碕」などで知られ、出雲神話の舞台となったこの地は、多くの神話があり、「天日隅宮」「日御碕神社」など夕日にちなんだお社もあります。かつて、日が沈む聖地ともされたこの地では、夕日の美しさだけでなく、歴史や神話も語り継がれています。
  4. 荒波を超えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~
    こちらも平成29年、『荒波を超えた男たちの夢が紡いだ異空間 ~北前船寄港地・船主集落~』が認定されました。「北前船」と言えば、歴史の授業で聞いたことがあるな、という方も多いのではないでしょうか。このストーリーでは、1の地域ではなく北前船の航路に当たる、日本海や瀬戸内海沿岸の地にスポットがあたっています。島根県では、浜田市がこれに該当しています。歴史好きとしては「北前船」は、江戸時代において、日本の各地を結ぶ重要な交通手段であり、各地に文化的経済的影響を多大な影響を与えたことで興味深い研究対象であると言えます。あなたの住む地と、浜田市に意外な接点があるかもしれませんよ。
  5. 神々や鬼たちが躍動する神話の世界 ~石見地域で伝承される神楽~ ←NEW
    そして、令和元年に認定された『神々や鬼たちが躍動する神話の世界 ~石見地域で伝承される神楽~』です。石見地方は島根県の西部に位置し、この地では石見神楽が人々に親しまれている、ということは何度も触れていますね。では、今回の認定に至ったのか、調べてみましょう。

なぜ石見神楽は日本遺産に登録されたのか?

日本遺産の認定とは

そもそもどのようなものが日本遺産に認定されるのでしょうか。

細かい規定に関しては、文化庁のHPをご覧いただくとして、ここでは簡単に説明したいと思います。日本遺産として認定されるストーリーは、歴史的な経緯あるいは、その地域の風土に根差した伝承、風習を踏まえており、地域に根差して継承、保存される有形無形の文化財を中核とした地域の魅力を伝えるストーリーであることが条件となります。このストーリーが、当該地域の際立った歴史的特徴特色を示すものであり、それを活かした地域づくりに明確なビジョンがあり、その地域づくりを行う体制があることが認められると認定の条件を満たしたことになります。

 

『神々や鬼たちが躍動する神話の世界~石見地域で伝承される神楽~』はなぜ日本遺産に認定されたのか

では、『神々や鬼たちが躍動する神話の世界~石見地域で伝承される神楽~』はなぜ日本遺産に認定されたのか検証してみましょう。

当HPでも何度も触れているように、石見地域において、石見神楽という無形の文化財は、古くから人々の生活に根付いていました。その衣装や小道具、そしてお面にも石州半紙を使用するなど地域の文化をも象徴する伝統芸能であると言えます。現在もお祭りや祝い事の際だけでなく、定期公演として毎週のように人々に親しまれ、多くの町が石見神楽を地域づくりの核に据えています。上述のように、島根県としても観光振興課も日本遺産を巡る旅という企画ページを公開するなど、行政も一体となって地域づくりを行う体制をとっています。以上のことから、日本遺産の認定に至ったのではないでしょうか。

 

おわりに

認定された、お墨付きを貰ったからよかった、ではなく、それを活かしてどうするか。それが日本遺産の意義であり、私たちの課題なのです。この地で活動するものとして、ありふれた言葉ですが、「ここがゴールではなくスタートである」と認識し、この課題に取り組んでいきましょう。そして、石見はあまり知らなかったけど興味をもったという方は、是非1度お越しくださいませ。