こうして石州和紙の石見神楽面が出来上がるのである

そして脱活へ

これだけの工程を経て(前回の記事はこちら)、ついに和紙面の最も特徴的な作業、「脱活」の工程に入る。

「脱活」は、もとは漆工芸の技法であり、長浜の人形師が和紙面を作る際に取り入れたという、和紙を貼りつけた粘土型を叩いて砕いて取り外す工程である。

型を抜いて外すのではなく、型を壊して取り外すからこそ、複雑な造形でも作ることが出来る「脱活」の様子は、是非、記事末の動画でご覧いただきたい。

前回、粘土での作業を紹介させていただいたが、粘土型にも多くの手間と職人の技術が詰まっている。
しかし、それをすべて砕いてしまうのである。

柿田さんは語る。
「有効な無駄。結局壊すのは無駄なのだが、これがないと和紙面は作れない。人生と一緒。有効な無駄は人間にも必ずある。」

和紙で神楽面を作ることへの想い

最後に、気になっていたことを尋ねてみた。
一見、真面目かどうかも怪しい恰好をしたコロチとエビス、そしてまだ大した発信力を持たない我々の取材をお受け頂いた理由である。

すると、この地にしかない長浜面(和紙面)を作るものとして、「和紙でここまでできるんだぞ」ということを発信したい、と答えが返ってきた。

いいものをちゃんと伝えたい、本物を大切にしたい、と想う我々と通ずるものを感じ、少しでも、その伝えるお手伝いが出来ればと我々もいつも以上に筆に力を込めた。それはコロチとエビスも同じだろう。

脱活の様子を取材させていただくということであったが、実際は脱活を含めた完成までの様子を取材させていただいた。

 

こうして、柿田面工房さんの取材を終えた二人にお話を聞いてみた。

エビス「事前に勉強してきたのですが、文字などからは想像していなかった作業もあり、非常に興味深かったです。」

コロチ「うむ、本物は面白いな。」

エビスの語るように、想像以上に手間を掛け、こだわりを持って作られていることがお分かりいただけたのではないだろうか。

こうして作られるからこそ、この面は本物であり、そこに面白さがあるのだろう。