柿田勝郎面工房さんへの取材!
柿田勝郎面工房さんを訪れる
この日、我々はコロチとエビスに連れられ、柿田面工房さんを訪れていた。
クラウドファンディングを達成し、購入することが決まった大蛇面の製作過程を見せてもらえるというのだ。
浜田市某所にある工房の扉を開けると、一面に面が貼ってある空間に圧倒される。
室内に足を踏み入れると、多年にわたり『石見神楽の保存継承』に寄与したと浜田市市長より表彰されたこともある勝郎さんが迎えてくださった。
古きを重んじる社中、新しいことを求める社中、それぞれのこだわりに寄り添いたいという勝郎さんのお話を伺った後、息子の兼志さんに工房へと案内して頂いた。
本日は、特別に別の面にて脱活の様子を見せて頂けるという。
和紙面の作成工程のなかでも最も特徴的で印象的な作業ということで、記者として胸が高鳴る。
手順としては前回の記事にてご紹介させていただいた。
読むのが面倒だという方はこちらをご覧いただきたい。
和紙の前にまずは粘土での作業
工房の中に入ると、多くの石膏型が保管されている。
この石膏型に粘土を重ね基本的な造形をつくる。
そして、粘土が柔らかいうちに細部を調整し、面に表情をつけていくという。
その際、粘土が収縮することも計算し作りこむという。
造形を決めると、手に馴染んだ工具を用い、陰影をつけていく。
和紙を貼りこんでいくため、出来上がり時には陰影が付きにくそうだが、少しでも陰影が出るように、各工程で陰影をつけることを怠らない。
陰影がつきにくいのがもどかしいところだと柿田兼志さんは語る。
しかし、そういったデメリットがあるが、その分、軽くて丈夫な面ができるというメリットもあるのだそうだ。
「和紙を貼る」、そこには文字からは見えない苦労とこだわりがある
今回、我々も和紙面作りの基本的な作り方などは勉強して取材に臨んだ。
しかし、実際に取材をしてみると、やはり我々が想像していたものを遥かに超える手間とこだわりがあった。
その中でも、最もただ読むだけとは違うなと感じたのが「和紙を貼る」ということであった。
「和紙を貼る」。
実際に和紙面を手にとっているので、もちろん単純に貼るだけでなく、何重にも貼り重ねていることはわかっていた。
それだけでも相当な時間がかかるであろうことも予想していた。
しかし、実際に取材を行ってみると、「和紙を貼る」という言葉の中に、多くの工程が隠されていることがわかった。
まず、和紙は手でちぎる。
和紙の繊維をほどくためである。
そして、防腐防水効果のある柿渋を混ぜた糊で型に張り付けていく。
貼る際に和紙の端同士を重ねる。
その部分の繊維をほどき、つなぎ合わせ1枚の和紙に戻す。
これにより強度が増していく。
これがパルプ紙ではできない、和紙独特の良さである。
さらに重ね合わせる際は、家の梁のイメージで強度を高められるように意識して貼っていく。
単純に「和紙を貼る」のではなく、考えながら貼っていくのである。
これだけでも、ただ「和紙を貼る」というだけでは伝わらない作業があることがわかっていただけたのではないだろうか。
こうして1重目の和紙を貼り、充分な厚さになるまで、何重にも重ねて貼っていく。
しかし、ただ重ねるのではない。1重貼り終え、和紙を乾燥させるとヘラを用い、和紙を皺を伸ばしながら、和紙を型に圧着させていく。
この作業を怠ると、重ねた和紙に隙間が生まれ強度が落ちてしまうという。この圧着という作業が実は和紙を貼るより大変な作業だそうだ。
柿田さんは言う。
「めんどくさいことをやりまくる。簡単にすると簡単な仕上がりになる。めんどくさいことをやればやるほど最後が一番良い仕上がりになる。」
単純に工程だけを字で追えば「和紙を貼る」となる。
しかしそこには、これだけの手間とこだわりが詰まっているのである。
次回に続く
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こうして石州和紙の石見神楽面が出来上がるのである